『蝉が鳴いている』

 
「ついたぞ」
とお父さんに揺すられて目を覚ました。
じっと座っているうち、いつ間にか眠ってしまっていたのだろう。
僕は少し寝汗をかいていてシートベルトの圧迫感が気持ち悪かった。
車から降りると日中の駐車場は蒸し蒸しと暑く、すぐにだらだら汗が流れた。
蝉の声を聞きながら木陰をくぐると病院の白い建物が見えた。
 
“『蝉が鳴いている』” の続きを読む

PEACH LIVE『毒を盛られてくやしい』感想

8/31にPEACHさんのコントライブ『毒を盛られてくやしい』を観てきました。
普段の観劇も含め(そもそもほとんど観ねえけど)あまり感想を書かない僕ですが、なんか言語化したくなったので書きます。
自分のことを棚に上げて厳しめな意見で申し訳ありません。
あと、読解力・知識不足もあるかも…
気に入らなければ殺してください。
必死で抵抗します。
 
“PEACH LIVE『毒を盛られてくやしい』感想” の続きを読む

やるかたない まぼろし、とめどもない うつつ

あの長く、長い三日間の末、
長く、長いだけの眠りを経て、
俺はただただ平穏な自室のベッドの上で目を覚ました。

今日から八月が始まるとはまるで思えない温い空気の中、
俺は寝ぼけ眼で日付を確認し、
今がまだ六月も終わりに差し掛かったばかりだということを改めて知る。

あの活気に溢れ雑然とした教室の風景などそこにあるはずもなく、
片付け切れていないゴミ袋、その静謐とした無機質な雑然のみが今の俺の生活を縁取っていた。

不思議な喪失感だ。
もともとたまさか手元に転がってきたような輝きがその期限を迎えただけだというのに、
とても大切なものを奪われてしまったような心持ちである。

“やるかたない まぼろし、とめどもない うつつ” の続きを読む

帰り道の話

俺の最寄駅って各停しか停まらないんですけど、その一つ前の駅は急行も停まるんですね。
で、最寄駅までの最終がなくなっちゃってもその駅終点の電車は一本残ってるから、
遅くまで飲んだ帰りとかそれ利用すること結構多くて。
まぁ当然最寄駅から歩くよりも家までちょっと距離あって、だいぶ住宅街の中を行くんですけど、
その途中のちょっとした公園の横に電話ボックスがあるんですよ。
みんな携帯持ってんのに今時って感じですけどまだ生き残ってて。
公園の灯りもほとんどない中、誰のためかも分からんのにぼんやり光ってるのがなんか不気味で、
普段はあんまり直視しないように通り過ぎるんですね。
“帰り道の話” の続きを読む

ヴェルタースパロディ

 
私のおじいさんがくれた初めてのキャンディ。
それはヴェルタースオリジナルで私は四歳でした。
その味は甘くてクリーミィで、こんな素晴らしいキャンディをもらえる私はきっと特別な存在なのだと感じました。
“ヴェルタースパロディ” の続きを読む