やるかたない まぼろし、とめどもない うつつ

あの長く、長い三日間の末、
長く、長いだけの眠りを経て、
俺はただただ平穏な自室のベッドの上で目を覚ました。

今日から八月が始まるとはまるで思えない温い空気の中、
俺は寝ぼけ眼で日付を確認し、
今がまだ六月も終わりに差し掛かったばかりだということを改めて知る。

あの活気に溢れ雑然とした教室の風景などそこにあるはずもなく、
片付け切れていないゴミ袋、その静謐とした無機質な雑然のみが今の俺の生活を縁取っていた。

不思議な喪失感だ。
もともとたまさか手元に転がってきたような輝きがその期限を迎えただけだというのに、
とても大切なものを奪われてしまったような心持ちである。

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帰り道の話

俺の最寄駅って各停しか停まらないんですけど、その一つ前の駅は急行も停まるんですね。
で、最寄駅までの最終がなくなっちゃってもその駅終点の電車は一本残ってるから、
遅くまで飲んだ帰りとかそれ利用すること結構多くて。
まぁ当然最寄駅から歩くよりも家までちょっと距離あって、だいぶ住宅街の中を行くんですけど、
その途中のちょっとした公園の横に電話ボックスがあるんですよ。
みんな携帯持ってんのに今時って感じですけどまだ生き残ってて。
公園の灯りもほとんどない中、誰のためかも分からんのにぼんやり光ってるのがなんか不気味で、
普段はあんまり直視しないように通り過ぎるんですね。
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ヴェルタースパロディ

 
私のおじいさんがくれた初めてのキャンディ。
それはヴェルタースオリジナルで私は四歳でした。
その味は甘くてクリーミィで、こんな素晴らしいキャンディをもらえる私はきっと特別な存在なのだと感じました。
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帰路にて

仕事終わりの電車内、ドア横のスペースにもたれた私はじんわりと汗の浮かんだ首元を拭う。
本音を言うなら座りたかったのだが、今の時間帯を考えれば仕方のないことだ。この位置を確保できただけでも儲けものだと思おう。
それにしても、外と車内の気温差が尋常でない。あまりこの状態が続くようだと、ただでさえ風邪気味なところ、さらに具合が悪くなりそうだ。
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映画レビュー『秘密の庭』

 
普段こういうことはやらないのですが、
9月に本番を控えたアガリスクの次回公演が『そして怒濤の伏線回収』という演目なので、
せっかくだから伏線回収系の映画をレビューしてみようと思います。

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