ひとり漫才

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甲…津和野諒
乙…津和野諒
 

 
甲  はい、どうもー!

乙  津和野諒でーす!

甲  いや僕ね、本っ当に許せないことがありまして!

乙  なになに。

甲  最近、携帯っていったらもうみんなスマホじゃないですか。

乙  そうだね。

甲  でね、便利なのはいいんですけども、
   こう道を歩いてると結構頻繁に見かけるわけですよ。

乙  ああ。

甲  歩きタバコを!!

乙  スマホどこいった!?

甲  え? ちゃんとポッケに入ってるよ?

乙  そういうこと言ってんじゃねえんだ。

甲  なるほどね。

乙  いや絶対分かってねえだろ。

甲  で、歩きタバコなんですけど、
   あー、歩きタバコって言ってもみんなピンとこないか!

乙  くるよ! ピンピンくるよ!

甲  あのー、こう右足と左足を交互に前に出すことで、

乙  「歩き」の部分から!? そこは特にみんな知ってるよ!?

甲  じゃあそこの説明はオミットしますけども。

乙  急に難しい言い方すんな、「省略」でいいだろ。

甲  もう埒があかねえ!!!

乙  こっちの台詞だからねえ!?
   お前と話してて埒があいた試しないよ!

甲  マジか。ちょっと待って、すぐあけるから。

乙  頼むぜ。

甲  で、歩きタバコをしてる人ってなんか白い?
   雲みたいなのを出すじゃないですか。

乙  煙知らんの!?

甲  そう、それ! 煙! ド忘れしちゃった。

乙  今度ちゃんと病院行こうな。頭の。

甲  うん。
   で、あの煙って嫌じゃないですかー。

乙  まぁ受動喫煙とか気になりますよね。

甲  柔道一直線!?

乙  全然言ってないよ!!
   周りの人がタバコの良くない煙を吸っちゃうことね。

甲  いや、それは周りの人が呼吸しなきゃいいだけの話でしょ。

乙  さらっと過酷なこと言ったね!?

甲  あの煙の嫌なところはね、見た目ですよ。

乙  見た目。

甲  蚊取り線香の煙を思い出すでしょ!?

乙  いや別に!?
   よしんば思い出したとしてなんなんだよ!

甲  ほら僕、蚊みたいなとこあるんでね。

乙  蚊みたいなとこ?

甲  若い女の生き血をすする!

乙  気持ち悪っ!! いや気持ち悪ぅ!!!

甲  二回言うほど!?

乙  何回でも叫びたいよ!!
   ていうか蚊は若い女以外もターゲットにしてるから!!

甲  で、歩きタバコのよくないところ、その2!

乙  続けるんだね。

甲  タバコを持つ手がね、こうブラーッと腰の下あたりで、

乙  はいはい!

甲  ピースの形になってるじゃないですか!

乙  いや、火!! 火が子どもの顔の高さにって話でしょ!?

甲  子どものことはどうでもいい。

乙  ピースの方がどうでもいい!!

甲  どうでもいいことないですよ!
   仮初めの平和の中で飼い慣らされた無知蒙昧な豚どもが、
   その象徴たるピースサインをブラブラと!!

乙  どうしたどうした。

甲  僕の目の前に掲げているわけですよ!!

乙  ……お前どんな体勢!? 子どもの顔の高さだよ!?

甲  四つん這いだよお!!!

乙  いまだかつてない逆ギレ!!

甲  さっきもね、歩きタバコしてる男がいたんですよ!

乙  あら。

甲  僕もついに我慢の限界がきましてね。

乙  おお。

甲  その場で大便を漏らしてしまいました。

乙  そっちの我慢が!?

甲  そのまま男のところにツカツカ歩み寄りまして。

乙  四つん這いでね。

甲  四つん這いで。
   で、ビシッと言ってやったんですよ!

乙  おお、なんて言ったの。

甲  いや、だからビシッて言ってやったんだよ。

乙  「ビシッ」て言ったの!?
   大便まみれの男が!? 四つん這いで!?

甲  うん。

乙  数え役満だよ!!! お前不審者だそれ!!

警  お兄さん、ちょっといいかな。

甲  え、はい。

警  こんなとこで何してるの?

乙  あ、漫才です。

警  ひとりで?

甲  ですね!

警  あのね、ちょっと近隣の方から通報がありまして。
   路上で大声出してる人がいると。

乙  はぁ。

警  うん、まぁとりあえずちゃんと立ってもらえる?

甲  ういっす!

警  お兄さん、なんかくさいけど、これ、え? 漏らしてる?

乙  あ、こいつがさっき漏らしちゃったみたいで。

警  こいつ? 君以外他にいないでしょ。

甲  やっちまいましたね。

警  うん、漏らしちゃうとかは仕方ないと思うんだけど、
   このあたりも最近物騒なんでね。
   住民の方を不安がらせるような行動には気を付けてもらえるかな。

乙  分かりました。

甲  歩きタバコの奴らにはちゃんと言って聞かせますんでね!

乙  いや、歩き漫才の方が問題になってんだよ!!

警  だからそれをやめろって言ってんの!
   ただでさえ、若い女性が襲われてる事件でゴタゴタしてんだから。

乙  え、それって、

警  何、お兄さん、なんか知ってるの?

甲  はい、若い女の生き血をすする津和野諒です!!

乙  自己紹介がてら自白しちゃった!!!

警  えっと、うん、とりあえず一緒に来てもらえるかな?

甲  え、生き血をご馳走してくれるんですか?

乙  そんなわけねえだろ! もういいよ!!

甲  どうも、ありがとうございましたー!!

警  ちょっと黙りなさい。

 
〈幕〉

「ひとり漫才」への2件のフィードバック

  1. 津和野さん
    ツワノート更新ありがとうございます。これ面白いですね。ぜひ劇団でやってもらいたいです。
    (^^)/

    1. ご覧くださいまして、こちらこそありがとうございます!
      いつか一卵性双生児の面白い役者が入団したらやらせてみたいなと思います。

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