帰り道の話

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俺の最寄駅って各停しか停まらないんですけど、その一つ前の駅は急行も停まるんですね。
で、最寄駅までの最終がなくなっちゃってもその駅終点の電車は一本残ってるから、
遅くまで飲んだ帰りとかそれ利用すること結構多くて。
まぁ当然最寄駅から歩くよりも家までちょっと距離あって、だいぶ住宅街の中を行くんですけど、
その途中のちょっとした公園の横に電話ボックスがあるんですよ。
みんな携帯持ってんのに今時って感じですけどまだ生き残ってて。
公園の灯りもほとんどない中、誰のためかも分からんのにぼんやり光ってるのがなんか不気味で、
普段はあんまり直視しないように通り過ぎるんですね。

でも昨日。いつもみたいに最寄駅までの終電逃して、その一駅前から家に向かって歩いてたんです。
そしたら、あのauのCMで流れてる着信音分かります? あれがどこからか聞こえてきて。
一瞬反応してポケット触ったんですけど、いや俺いつもマナーモードだから自分の携帯じゃないぞと。
で、周りに誰もいないから、なんだろなぁと思ってふっと見たら、
例の電話ボックスの中、緑の公衆電話の上にスマホが置いてあって。多分それなんですよ。
電話ボックスにスマホってどういう状況? って感じですけど。
まぁ酔っ払って置き忘れたとかそういうことだと思って、気味悪いけど持ち主がホントに困ってたらアレだなぁと。
俺もつい先日携帯失くして、それが無事に警察届いてたってことがあったからこれは他人事じゃないなって。

んで、電話ボックスに入ったらやっぱりそれが鳴ってて。
なんかちょっと泥とか付いてて汚かったんですけど、
東京03の市外局番から掛かってきてたからやっぱり落とし主からかなって電話に出たんですよ。
「もしもし?」って言ったんですけど、返事はなくて。
「すみません、持ち主の方ですかね?」……無反応。
あれ? もう一回「もしもしー?」って言ったら、ボソボソした声で「左手に持ち替えて……」。

は? え、どゆこと? いや確かに右手でスマホ持ってたんですけど、どっから見てんの? っていう。
周りキョロキョロ見回しても暗いから全然分かんないんですよ。

で、状況が理解出来なくて静かにパニクってたら、急に目の前の公衆電話が鳴り出して。
思わず「うおっ」て声出ましたよ。

混乱しすぎて思わず受話器取ったんですけど、向こう無言で。
恐る恐る「もしもし……?」って言ったら。

「もしもし……?」って、左手に持ったスマホから、俺の声が。

おかしいでしょ。公衆電話出る前から繋がってるんだから。
もう息も出来ない状態でスマホも受話器も放り出して逃げましたよ。

もう終電逃せないです。あの道は無理です。

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